学校長式辞
令和6年度 入学式式辞

 暖かい春の陽気に校門の桜が満開になり、生命が躍動する季節を向かえました。吹奏楽部の演奏に包まれ、保護者およびご来賓の皆様のご臨席のもと、令和6年度 宮城県泉高等学校 入学式 を挙行できますこと、心より御礼申し上げます。

 ただ今 入学を許可いたしました、英語科40名、普通科200名、合計240名の新入生の皆さん、入学おめでとう。今日から皆さんは、泉高校の生徒です。皆さんの入学を心から歓迎いたします。

 

 さて、本校は、昭和48年、当時の泉市に初めて開校した、男女共学の普通科高校であり、平成7年の英語科新設を経て、今年、創立52年目を迎えます。

 本校では、「健全な心身の鍛練、知の追求、情操の陶冶、豊かな人間性の育成」という建学の精神のもと、知・徳・体のバランスのとれた豊かな人間形成を目指し、3つの校訓を掲げ、日々の教育活動に取組んでおります。

 

 3つの校訓とは「明朗進取、自重敬愛、勤勉奉仕」です。

「明朗進取」とは、「明るく朗らかに、自ら進んでことをなすこと」を意味します。

「自重敬愛」とは、「自分の行いを慎んで軽々しく振舞わず、相手を敬い親しみの心を持つこと」です。

「勤勉奉仕」とは、「仕事や勉強に一心に励み、献身的に社会につくすこと」です。

 卒業生や在校生も、この良き伝統と校風を受け継ぎ、学業はもちろん、部活動や生徒会活動、学校行事、社会貢献活動などに充実した生活を送ってきました。

 

 新入生の皆さんに、これから3年間の過ごし方について、参考にしてもらいたいお話しを紹介します。

 野生の鴨、野鴨(のがも)は、飲まず食わず、寝ることもなく、何日も飛び続けることができる能力を持った渡り鳥です。その野鴨たちがデンマークのジーランドというところに降りたちました。そこには優しいおじいさんがいて、美味しい餌を野鴨たちに毎日毎日あげていました。

 時が流れ、春の飛び立ちの時期になりました。その時、野鴨たちは考えました。毎日毎日、美味しい餌がもらえるならここに居てもいいかもしれない。そして、野鴨たちはそこにいることに決めました。二年が経ち、三年が経ち、やがてその優しいおじいさんは亡くなってしまいました。

 野鴨たちは、春の飛び立ちの時期になって他の場所に移ろうと思ったものの、飛ぶ力を失くしていて飛ぶことが出来ませんでした。しかも、運悪く雪解け水の激流がやってきた時、他の鳥たちのように逃げることができず、この野鴨たちは流されてしまいました。

 これはデンマークの哲学者キルケゴールの「野鴨の哲学」と呼ばれる寓話です。トーマス・ワトソンがIBMをつくるきっかけとなった哲学でもあります。

 漢字で「家」に「鴨」と書いてアヒルと読みます。卵や肉を得るために野生のマガモを飼いならしたもので、体重が増え、翼が小さくなり、数メートルしか飛べない鴨です。

 IBMの精神は「Wild Ducks」。「野鴨たれ、アヒルになるな」という意味です。「日常に飼いならされるな、安定にあぐらをかくな、苦労を厭わず、いつもチャレンジ精神でことにあたれ」ということを言っているのでしょう。

 私たちは普段の生活の中で、与えられることに慣れてしまい、与えられないことに対して不満を持ってしまいがちです。また、「これぐらいでいいだろう」とか、「誰かがやってくれるだろう」と言う発想こそが、主体性のない飼い慣らされたアヒルを作ることに繋がります。日頃行っていることを「やらされている」という受け身で捉えるのではなく、自分は何をしたいのか、自分はどうなりたいのかを考え、主体的に、積極的に行動することとが重要になります。

 

 本校では期待する生徒像として、 「積極挑戦し未来を切り開く生徒」 を掲げています。

 「It's better to do something and regret it, than not do something and regret it.」 

分かりますか? 日本語では「やらずの後悔よりも、やっての後悔」と言います。

 アメリカの作家、マーク・トウェインは「自分で決断しやったことは、例え失敗しても、20年後には笑い話にできる。しかし、やらなかったことは、20年後にも後悔として残る」と言っています。また、作家の林真理子は「やってしまった後悔はだんだん小さくなるけど、やらなかった後悔はだんだん大きくなる」と言っています。

 皆さんには、無限の可能性があります。自分の限界や能力を簡単に決めつけないでください。生涯に渡り挑戦し、自分の未来を自らの行動で切り開いていく中で、限界は広まり、能力は高まっていくのです。「It's better to do something and regret it, than not do something and regret it.」「やらずの後悔よりも、やっての後悔」の言葉を心に刻み、「行動することによって不安を払拭し、思考もポジティブにしていく」という、「積極挑戦しながら考える」姿勢を、これからの3年間で身につけましょう。

 

 新入生の保護者の皆様、改めてお子様の入学、誠におめでとうございます。これまでの15年間、お子様を立派に育まれました保護者の皆様にとっても、お喜びひとしおのことと拝察いたします。

さて、入学に当たり、保護者の皆様にお願いが2つございます。

 1つは、お子様が高校生として必要かつ望ましい習慣を身につけるよう、引き続きご家庭での見守りをお願いしたいということです。その上で、無理なく親離れ・子離れできるよう、お子様を見守りつつも、少しずつ距離を広げていって下さい。とはいえ高校生は、経験も判断力もまだまだ未熟です。また、高校生を取り巻く環境は必ずしも安心できるものではありません。必要に応じて寄り添い、必要に応じて俯瞰する。その繰り返しが、お子様の自立を促します。
 もう1つは、泉高校の教育方針をご理解いただき、学校との連携をお願いしたいということです。泉高校には、生徒の実態と社会の要請を踏まえた教育があります。高校1年生は、中学4年生ではありません。もっとストレートに言えば、高校は義務教育ではありません。在籍しているだけでは、進級も、ましてや卒業も叶いません。私たち教職員は、お子様を1日でも早く泉高生にするべく、時には厳しく指導してまいります。

 以上の2点をご理解いただいた上で、家庭と学校が両輪となり、お子様に接してまいりたいと考えます。またその接し方も、指導から支援へ、支援から伴走へ、伴走から自走へと変容し、ゆくゆくは「自分の足で走れる、自走できる学習者になってもらいたい」と考えております。何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 本日入学した240名の新入生の皆さんが、無事、3年後の卒業を迎えたとき、「泉高校に入学して良かった」と思えるよう、私ども教職員は一丸となって取り組んで参ります。新入生の皆さんが初心を忘れることなく、学業や様々な活動に積極挑戦しながら考え、苦労や困難を経験しつつも、大いに成長し活躍されることを心から祈念し、式辞といたします。

 

 令和6年4月8日

宮城県泉高等学校 校長 菅原 賢一